ハートフルクリニック北井内科

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気を付けたい病気

高脂血症・脂質異常症

高脂血症とは

血液中にはコレステロール、中性脂肪、リン脂質および遊離脂肪酸の4種類の脂質が溶け込んでいます。
これらの脂質のうち、コレステロールと中性脂肪は多すぎると問題になり、異常に多い状態が高脂血症です。

高脂血症は遺伝子異常や他の病気に伴って現れることもありますが、そのほとんどが生活習慣に関連した原因が重なって発症します。
日本人はもともと高脂血症の少ない国民でしたが、食生活の欧米化に伴い急激に増加しており、今後さらに増加すると予想されています。現在で、日本の高脂血症の患者さんは約2,200万人と推測されています。

コレステロールと中性脂肪の役割

人間の体は無数の細胞から構成されており、コレステロールはその細胞膜の材料となっています。
このためコレステロールが不足すると、細胞は健全な状態が維持できなくなります。また、コレステロールはホルモンや胆汁の材料になります。
1日のコレステロール必要量は1.5-2.0gであり、そのうちの約70%が肝臓や小腸で作られ、残りの約30%が食物から吸収されています。

中性脂肪はエネルギーを貯蔵するという重要な役割があります。人間が活動するときは、まず糖分がエネルギーとして利用されます
。糖分が少なくなると、中性脂肪がエネルギー源として使われます。つまり、中性脂肪はいざというときの非常食としての役割があるのです
。中性脂肪もコレステロールと同様に、肝臓で合成されるものと、食べ物から摂取されるものがあります。

このようにコレステロールも中性脂肪も、決して不要なものではなく、生命の維持に欠かせないものです。
しかし、多すぎると動脈硬化を進展させてしまいます。

高脂血症の種類

高脂血症は簡潔に3種類に分類されます。

高コレステロール血症 総コレステロール値が高い場合
高中性脂肪血症 中性脂肪が高い場合
混合型高脂血症 総コレステロール値と中性脂肪値の両方が高い場合

それぞれの種類により、治療方法が異なります。

高脂血症の症状

コレステロールや中性脂肪が高くても、痛みやかゆみといった症状はみられません。
コレステロール値が極端に高いと、黄色腫とよばれるコレステロールのかたまりが上まぶた等にできることがあります。
しかし、これはコレステロールと関係なく加齢によりできることもあります。

高脂血症が怖い点は、放置しておくと動脈硬化が進むことです。
しかしながら、動脈硬化の初期の段階では、まだ自覚症状はありません。動脈硬化が進展して、脳、心臓、腎臓などの重要な臓器が血流障害になって初めて、脳梗塞、狭心症・心筋梗塞、腎不全といった命に関わる病気の症状が現れます。

動脈硬化も高脂血症と同じように、「ものいわぬ病気」で、痛くもかゆくもないうちに進行していきます。
しかしながら、高脂血症は糖尿病や高血圧と比べ、怖い病気と感じている人は少ないようです。
事実、自分が高脂血症であることを自覚している人は、全高脂血症患者さんの30%程度にすぎません。

悪玉コレステロールと善玉コレステロール

LDLコレステロールはコレステロールを体中に運ぶという役割があります。
つまり、LDLコレステロールが過剰になると、細胞中にも必要以上にコレステロールが多くなり、動脈の壁にコレステロールが蓄積されて動脈硬化が進展していきます。このため、LDLコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれています。
一方、HDLコレステロールは細胞で使われずに余ったコレステロールを回収し、肝臓へ戻す役割があります。
この働きにより、HDLコレステロールが多いほど、動脈の壁にコレステロールが蓄積しにくくなり、動脈硬化になりにくくなるという訳です。
このため、HDLコレステロールは善玉コレステロールと呼ばれています。

動脈硬化とは

動脈硬化とは動脈の壁が厚く硬くなり、血管の内側に脂質や細胞などが付着して血管内部が狭くなる状態をいいます。
動脈の壁にLDL(悪玉)コレステロールが入り込み、お粥のようにどろどろした粥腫(アテローム)が形成されます。
これが動脈の内腔を狭くして、血液の流れを妨げます。
特に、LDL(悪玉)コレステロールが血液中に過剰にあると、コレステロールがアテロームの芯の役割をするため、動脈硬化が急速に進みます。
一方、中性脂肪はそれ自体が動脈硬化の原因にはなることはありません。
しかし、中性脂肪が多いと、HDL(善玉)コレステロールが減少して、LDL(悪玉)コレステロールが増加するため、間接的に動脈硬化の原因となります。

高脂血症の検査

高脂血症の有無、程度は血液検査で簡単にわかります。
検査前日の夕食以降は飲食をせず、血液検査を受けるようにしましょう。
また、飲酒により中性脂肪の数値が上昇するため、前日は禁酒して下さい。
症状のない病気である高脂血症を発見するために、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
1年に1度は採血検査を受けるようにしたいものです。

なお、当院では、採血後15-30分で総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロールの結果をお伝えすることができます。

高脂血症の診断

血液検査により出た測定値は、狭心症や心筋梗塞を予防することから設定された日本動脈硬化学会の基準値により判定します。
一般的には次のいずれかの場合に、高脂血症と診断されます。

  • 総コレステロール値 220mg/dl以上
  • 中性脂肪値 150mg/dl以上
  • HDL(善玉)コレステロール 40mg/dl以下

総コレステロール値、中性脂肪値が正常であっても、HDL(善玉)コレステロール値が40mg/dl以下であれば、高脂血症と診断されます。事実、HDL(善玉)コレステロール値が低い人は、心筋梗塞等の動脈硬化の病気になりやすいことがわかっています。

高脂血症の治療

高脂血症の治療は、まず食事療法や運動療法、そして禁煙などの生活習慣の是正を行います。 しかしながら、体内のコレステロールの約70%は肝臓や小腸で合成されるため、食事からコレステロールを全く摂らなかったとしても、コレステロールが異常に高くなることがあります。このため、食事療法や運動療法を行っても十分な改善がみられない場合は、薬による治療を行います。

最近の薬の進歩により、コレステロールや中性脂肪の数値は比較的容易に低下させることができるようになりました。 また、遺伝の病気である家族性高脂血症では、ほぼ全例に薬による治療を必要とします。

高脂血症の運動療法

運動療法の有効性は次の3つの理由から証明されています。

  • 摂り過ぎたエネルギーを消費し、脂肪が皮下や内臓に蓄積されるのを防ぐ。
  • 血行をよくして血管のしなやかさを改善するとともに、血圧を低下させて動脈硬化の進展を防止する。
  • 脂肪分を調整する酵素のひとつである リパーゼを活性化させて、LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪の分解を促進して、HDL(善玉)コレステロールを増加させる。

運動療法を効率よく行うために、激しい運動をする必要はありません。また、急に激しい運動を始めると、体内に大量の活性酸素が生じ、動脈硬化を促進することになりかねます。普段よりも長い距離を歩くだけでも、HDLコレステロール値を上昇させることができます。時間がないから運動ができないと諦めないで、簡単な動作を増やすことから始めましょう。

高脂血症の食事療法

コレステロールが高い場合と、中性脂肪が高い場合で異なりますが、以下の注意点は共通します

  • 1日3食きちんと食事を摂る
  • 間食は控える
  • 脂っこい食べ物を控える
  • 就寝前に食べない
  • 塩分を控えめにする
  • 標準体重を目指し、肥満にならないように注意する

高コレステロール血症の食事療法

  • コレステロールの多い食品を避ける
    1日のコレステロールの摂取量を300mg以下にすることが目標になります。
    具体的には、卵黄、するめ、レバー、うなぎ、肉の脂身、魚の卵等です。日常的に口にするものとしては、卵黄がもっとも多く、1個あたり220mgものコレステロールが含まれています。卵黄はマヨネーズ、洋菓子にも多く含まれていますので、注意が必要です。一方、卵白には1個あたり1mg以下しか含まれていません。
  • 食物繊維を多くとる
    食物繊維は腸内でコレステロール、中性脂肪、糖質などの吸収を妨げる役割があります。また、食物繊維は胆汁酸を吸収して体外に排出させるので、新たな胆汁酸が作られます。この過程でコレステロールが材料となるため、コレステロールは低下します。
  • 肉の脂身を控える
    肉の脂身にはコレステロール値を上げる飽和脂肪酸が多量に含まれていますので、脂身を食べないようにしましょう。肉の赤身の部分は心配いりません。
  • アルコールを控える
    飲酒により肝臓で中性脂肪の合成が促進され、中性脂肪値が上昇します。特に、飲酒した翌日に血液検査をすると、中性脂肪は上昇しているため、血液検査の前日は飲酒しないようにして下さい。

高中性脂肪血症の食事療法

  • カロリーを制限する
    高中性脂肪血症の人は、肥満を合併している傾向が高いため、カロリー制限による減量が必要です。減量のみで、中性脂肪値が正常化することもあります。
  • 糖分を控える
    糖質摂取過剰と高中性脂肪血症の関係は明らかになっており、特に甘味類を控える必要があります。
  • アルコールを控える
    飲酒により肝臓で中性脂肪の合成が促進され、中性脂肪値が上昇します。特に、飲酒した翌日に血液検査をすると、中性脂肪は上昇しているため、血液検査の前日は飲酒しないようにして下さい。

高脂血症とたばこ

たばこが燃焼するときに生じる一酸化炭素やニコチンにより遊離脂肪酸、中性脂肪、LDLコレステロールが増加します。 また、LDLコレステロールの酸化が進み、変性LDLコレステロールができやすくなるため、動脈硬化が促進されます。

このように、たばこは高脂血症を悪化させ、さらには高脂血症の合併症である動脈硬化をより起こりやすくしてしまいます。 以上の理由より、禁煙が絶対に必要です。 禁煙が難しいとお思いの方は、ぜひ禁煙外来を受診してください。

高脂血症とアルコール

適量の飲酒によりHDLコレステロールが増加するため、動脈硬化の予防となり得ます。 また、顔が赤くなることからわかるように血管を広げて、血行をよくする作用もあります。 適量の飲酒とはビールなら500ml、日本酒なら一合、ワインならグラス2杯までです。

逆に、お酒を飲みすぎると、肝臓で中性脂肪の合成が促進され、中性脂肪値が上昇します。 さらにHDLコレステロールが減少し、結果としてLDLコレステロールが増えてしまいます。 過度な飲酒は肥満や高血圧の原因となるため、動脈硬化の進行をさらに加速させます。

実際に、過度の飲酒が原因の高脂血症の患者は決して少なくありません。 この場合、なによりも禁酒が最も重要な治療法となります。お酒の量を減らすポイントは以下の通りです。

  • 空腹の食前ではなく、食後に飲む
  • あらかじめ飲む量とつまみの量を決めておき、それを守る
  • お酒がすすむような食べ物をつまみにしない
  • できるだけゆっくり飲むようにする
  • 焼酎やウイスキーは、できるだけ薄くして飲む
  • 休肝日を作り、休肝日を少しずつ増やしていく。

高脂血症のまとめ

高脂血症の治療は病気を治すというよりも高脂血症によって進む動脈硬化や、それによって起こる心筋梗塞や脳梗塞を予防することが最大の目標です。 最近の薬の発達により、糖尿病や高血圧と比べ、高脂血症は容易に改善できるようになりました。 現在のコレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール値を把握し、「ものいわぬ病気」である高脂血症の治療に積極的に取り組むことが重要です。

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