ハートフルクリニック北井内科

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気を付けたい病気

高血圧

高血圧とは

心臓はポンプのように収縮と拡張を繰り返して、全身に血液を送り出しています。
血液の流れを血流といい、血流の影響で動脈の壁にかかかる圧力を血圧といいます。
心臓が収縮するときに血圧は最も高く、収縮期血圧(上の血圧)と呼ばれ、心臓が拡張するときに血圧は最も低く、拡張期血圧(下の血圧)と呼ばれています。
収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上の場合を高血圧といいます。
50歳以上の2人に1人は高血圧であるといわれており、日本には3,000万人以上の高血圧患者がいると推測されています。

高血圧の原因

高血圧は本態性高血圧と二次性高血圧の2種類があります。
二次性高血圧は腎臓、副腎、甲状腺等の異常が原因で血圧が高くなる疾患であり、原因を治療することにより血圧を改善できます。

一方、本態性高血圧は高血圧全体の80%以上を占めていますが、その原因はいまだに解明されていません。
しかし、本態性高血圧は食塩の摂り過ぎ、肥満、ストレス、遺伝等が関係していることがわかってきています。

高血圧の症状

高血圧の初期の段階では、ほとんどの人が無症状です。
血圧がある程度高くなると、頭痛、肩こり、倦怠感、動悸等の症状がみられることもあります。
しかし、これらの症状は高血圧に限ったことではないため、別に原因があるのではと考えがちであり、血圧が高いことに気づかない人も多いようです。
このため、検診で初めて高血圧を指摘されることもよくあります。

高血圧が続くと

血圧が高いだけでは無症状であることが多いため、血圧が高いことに気づかなかったり、高血圧と指摘されても放置してしまうことが少なくありません。
高血圧はよくないと漠然とはわかっているものの、なにが問題になるのかが意外と知られていません。

高血圧の怖さは動脈硬化が進展することです。
その結果、動脈の内腔が狭くなったり詰まったり、逆に膨張(瘤)して破裂することもあり、致死的な病気を引き起こしかねません。
脳の動脈の内腔が詰まってしまうと、脳梗塞が起こり、破裂してしまうと脳出血が起こります。
心臓の動脈(冠動脈)の内腔が狭くなると狭心症が起こり、詰まってしまうと心筋梗塞になります。
さらに、心臓では高血圧が続くとより強い力で血液を送る必要があるため、筋力トレーニングのごとく心臓の筋肉が徐々に肥大(心肥大)してしまいます。
その限界を超えると、心臓の機能は低下して、心不全となります。

腎臓では、小動脈が動脈硬化を起こして、腎機能が低下します。腎不全の末期では透析療法を必要とすることもあります。
このように高血圧は知らず知らずのうちに命に関わる合併症を引き起こすことから、「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれています。

血圧測定

血圧は常に一定という訳ではなく、時間帯により変動します。起床時に血圧は最も高く、就寝時に最も低くなります。特に、起床時に急激に血圧が上昇することがあり、モーニングサージと呼ばれています。
この急激な血圧上昇により動脈の壁が傷つきやすくなります。実際、心筋梗塞の発症が最も多い時間帯は早朝です。

また、血圧は季節によっても変動します。
気温が10℃低下すると、平均して上の血圧は13mmHg、下の血圧は7mmHg上昇することが知られています。
冬に最も血圧が高くなるため、心筋梗塞は冬に最も多く発症します。

当院では、1日2回の家庭での血圧測定を推奨しています。
血圧の不安定な起床時や食後ではなく、朝食前と夕食前の2回測定して下さい。
椅子に背筋を伸ばして座って、腕に力を入れずにリラックスした状態で測定します。
家庭での血圧値は治療効果や経過をみるために重要な指標となるため、血圧手帳等に記録する習慣をつけて下さい。
また、来院する際には持参していただければ参考にさせていただきます。

最近ではいろいろな血圧測定器が市販されていますが、上腕で測る血圧計が最も信頼性が高いです。
一方、手首および指で測る機器は測定値の変動が大きいため、信頼性は劣ります。

白衣高血圧

高血圧の人に限らず、血圧を病院で測ると家庭よりも高い測定値がでることがよく知られています。
特に、家庭での血圧値は正常で、病院で測定すると140/90mmHg以上となる場合は、白衣高血圧と呼ばれています。
家庭の血圧は落ち着いた状態で測定するため、信頼度が高いといえいます。
このため、白衣高血圧は治療対象にならないことも少なくありません。

しかし、左室肥大などの高血圧の合併症がある場合は、病院以外でも血圧が高くなっていることが多く、治療の必要があります。 

高血圧の治療

血圧を上げる誘因の改善が治療の基本です。
塩分制限、肥満の解消、およびストレスの解消に努めることから始めます。
上記の生活習慣の是正にも関わらず、血圧が高い状態が続く場合は血圧を下げる薬(降圧薬)が必要です。
初診時の血圧値で以下のように3群に分けて、段階的に治療を進めてゆきます。

低リスク群
(初診時血圧140-159/90-99mmHg)
生活習慣の是正を行い、3ヵ月に血圧が正常化しなければ、降圧薬を開始します。
中等リスク群
(初診時血圧160-179/100-109mmHg)
生活習慣の是正を行い、1ヵ月後に血圧が正常化しなければ、降圧薬を開始します。
高リスク群
(初診時血圧180/110mmHg以上または高血圧の合併症のある場合)
直ちに降圧薬を開始します。

「血圧の薬を飲むと、一生飲まなければいけないからイヤだ。」という訴えをよく聞きます。
しかしながら、生活習慣を改善して血圧を安定させれば、降圧薬を中止できる場合もあります。
また、前述のごとく気温により血圧は変動するので、冬季のみ降圧薬を必要とするケースもあります。

血圧の目標値

高血圧治療の目標値は、年齢と合併症の有無によって下記のように異なります。

65歳以上 140/90mmHg未満
65歳未満 130/85mmHg未満
糖尿病または腎障害患者 130/80mmHg未満

特に75歳以上の高齢者においては、治療により脳、心臓、腎臓等の重要臓器の循環障害を起こす可能性があるため、慎重に治療を行う必要があります。

降圧薬治療の基本

降圧薬が開始された場合、多くの方が降圧薬を長期に継続することになります。

降圧薬はあくまでも血圧を下げる薬であって、高血圧そのものを治す薬ではありません。このため、高血圧が続く限り、降圧薬を飲み続ける必要があります。
なぜなら、命にも関わる高血圧の合併症を起こす危険にさらされるより、降圧薬で血圧を下げて合併症の発生を防ぐ方が、はるかに大切であるからです。
降圧薬開始当初は穏やかな降圧を目標に処方しますが、その後血圧の目標値達成のために量を増やしたり、他の薬を追加したりして調節します。
実際、重症の高血圧の場合は、1種類の降圧薬では不十分なことがあり、3-4種類の降圧薬を服用して血圧を正常化させることもあります。

降圧薬によって一時的に血圧が下がったからといって、自分の判断で服薬を中止すると血圧は元の高い値に戻ってしまいます。
血圧の上下が繰り返されると、動脈の壁が傷ついて合併症の発症に繋がるため、大変危険です。
用法・用量を守り、規則的な服薬を心がけて下さい。

高血圧の食事療法

過剰な塩分摂取は高血圧の一因です。
塩分を過剰に摂取して血液中のナトリウム濃度が上昇すると、細胞の活動が低下してしまいます。
このため、水分でナトリウムを薄めようとする作用が働き、腎臓で水分排出が減るために血液量が増加して、血圧が上昇するのです。

以上の理由で、高血圧の食事療法の基本は塩分を控えることです。
1日の塩分摂取量はヨーロッパでは5-6g、多いといわれるアメリカでも8-10gであるのに対し、日本人は11-13gとかなり多く摂取しています。
血圧が正常の人でも10g以下に塩分摂取量を抑えることが勧められています。
高血圧の人では6g以下が目標であり、日本人の平均の半分にする必要があります。

高血圧は同一家族内で多く発生することが知られています。
この理由は、遺伝ばかりでなく、塩分をよく使う家庭での食生活にも原因があると考えられています。
次の世代に高血圧を継がせないためにも、薄味の食事を心がけましょう。

逆に、カリウムを摂取すると、体内からナトリウムの排泄が促進されます。
野菜や果物にはカリウムが豊富に含まれているため、積極的に摂るようにしたいものです。
事実、塩分摂取量が多く、高血圧が多いとされる東北地方でも、りんごの生産地では高血圧の人が意外と少ないことが知られています。
ただし、腎臓の機能が悪い方では、カリウムの摂取により高カリウム血症となって、逆に血圧が上がることがあるため、注意して下さい。

塩分減量の工夫

塩分を控えることは、食事療法の中で一番つらいことかも知れません。 以下に日々の食生活の中での工夫を紹介します。

  1. ラーメンやうどん等の麺類の汁には4-6gの塩分が含まれているため、できるだけ残すようにしましょう。
  2. しょうゆ、ソースは回しがけせずに、小皿に入れて摂取量を減らしましょう。
  3. だしをきかせて、しょうゆ等の調味料の使用を減らしましょう。
  4. 香辛料、かんきつ類、ごま、しょうが、にんにく等を利用して味気のない減塩食を引き立てるようにしましょう。

塩辛い味が好みの日本人には、いきなり1日6gまでの塩分制限は難しいです。
徐々に慣らしていきましょう。

高血圧の運動療法

運動療法は食事療法と並んで、改めるべき生活習慣の柱です。適切な運動を継続すると、血圧を下げることができます。
適度な運動とはウォーキング、軽いジョギング、水泳等の有酸素運動であり、約3週間の継続で降圧効果が現れます。
実際、30-45分のウォーキングを10週間毎日続けた場合、半数の人の上の血圧が20mmHg低下したという報告もあります。

また、適度な運動は高脂血症、糖尿病、肥満の予防・改善効果があるため、合併症の予防にも効果的です。一方、一瞬息を止めて力を振り絞る重量挙げ等の無酸素運動は、一時的に血圧を急上昇させるため、高血圧の人には危険です。

なかなか毎日運動するのは難しいかと思われます。
歩ける距離は乗り物を使わないようにしたり、エスカレーター、エレベーターに頼らず階段を利用することから始めてみましょう。

高血圧とたばこ

たばこに含まれるニコチンや一酸化炭素は血管を収縮させ、たばこ1本で10-20mmHg血圧を上昇させます。
特に朝の「起き抜けの1本」は30-50mmHgも血圧を上昇させてしまうこともあります。さらに喫煙により、高血圧の合併症である狭心症、心筋梗塞、脳梗塞になりやすいことも明らかになっています。

たばこはどの側面からもいいことはありません。本数を減らすだけでは不十分であり、完全に止める必要があります。
しかしながら、「体に悪い」と分かっていても、喫煙の習慣はなかなか断ち切ることができないのが現状です。

最近では内服薬または貼付薬(パッチ)といった禁煙補助薬があり、禁煙の達成率が高まっています。
当院では禁煙外来を設けており、健康保険を使って禁煙補助薬の処方が可能です。
禁煙を希望される方は、一度ご相談下さい。

高血圧とアルコール

適量の飲酒は、血管を拡張させて、血圧を下げることもあります。
適量とは、ビールなら大瓶1本、日本酒なら1合、焼酎(25%)なら120mlまでです。
この適量を超えて飲みすぎた場合は、逆に血圧は上昇します。
また、お酒のつまみには食塩を多く含むものが好まれるため、塩分摂取過剰にならないよう注意して下さい。

毎日飲酒する人は、飲まない人より10歳年上に相当する血圧値であることが知られています。お酒を飲む人は週に2日以上の休肝日をつくるようにしましょう。

入浴と血圧の関係

一般的に熱いお風呂が好まれがちですが、熱いお湯に入ると交感神経の作用で血管が収縮して、血圧は上昇します。
また、長時間入浴して汗をかくと血液の濃度が高くなって、血栓ができやすくなるため脳梗塞等が起こる危険性が増します。
一方、39℃程度のぬるめのお湯に入ると、副交感神経が活性化して血管が拡張するため、血圧は低下します。
血圧の高い人は、ぬるめのお湯にゆっくりつかるようにしましょう。
また、急激な温度の変化は血圧を急上昇させるため、寒い時期には脱衣所を暖めておくなどの工夫をして下さい。

高血圧治療の目標

血圧を上げる要因は数多くあります。
このため、血圧が高いと生活にさまざまな制限が付いたり、降圧薬を飲まなければいけないかも知れません。
高血圧治療の目標は単に血圧の数字を下げることではなく、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な合併症を未然に予防することです。
しかしながら、無理な生活習慣の是正計画を立てたり、生活の質が犠牲になるようでは、心身とも快適に過ごせません。
実現できる治療計画を立てて、現在の自分だけではなく、将来の自分をもいたわる気持ちで血圧管理に取り組みましょう。

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