
逆流性食道炎とは|
逆流性食道炎の原因|
逆流性食道炎の症状
逆流性食道炎の検査|
逆流性食道炎の治療|
逆流性食道炎と食事
逆流性食道炎と運動|
逆流性食道炎とたばこ|
逆流性食道炎とアルコール
逆流性食道炎とは
なんらかの原因で胃液が食道に逆流することがあります。
逆流した胃液に含まれる塩酸や消化酵素によって
食道粘膜にびらん、発赤などの炎症を起こした状態が
逆流性食道炎です。
食道は胃とは異なり、
胃酸から自らを防御する機能・構造がないため、
胃酸により容易に炎症が起こります。
現代の生活習慣とも関係して増加している病気であり、
日本人の約1割が患っていると推測されています。
逆流性食道炎の原因
逆流性食道炎の原因には以下の機序が関与しています。
(1) 食道と胃のつなぎ目で逆流防止弁の働きをしている
下部食道括約筋の締まりが悪くなり、
胃液の逆流が起こりやすくなります。
これは「げっぷ」のメカニズムと同じです。
(2) 食道が横隔膜を貫いている部位である横隔膜裂孔が緩み、
胃の上部が横隔膜より上にはみだし(食道裂孔ヘルニア)、
胃液の逆流が起こりやすくなります。
(3) 胃の中の圧力が高まり、
胃液が押し出され、逆流しやすくなります。
(4) 食道のぜん動運動が低下して
逆流した胃液を胃内に戻せなくなり、
胃酸が食道に停滞し、逆流しやすくなります。
(5) 胃液の分泌が多くなり、
胃液量が増加して、逆流しやすくなります。
以上の原因の1つが
単独で逆流性食道炎を引き起こすことは少なく、
いくつかの原因が重なって引き起こされます。
逆流性食道炎の症状
胸やけ、呑酸(どんさん:口が酸っぱくなる感じ)、つかえ感が
最も多く、三大症状と呼ばれています。
他に、胸痛、咳、声のかすれ、のどの違和感、
ときには耳の痛みといった症状もみられることがあります。
逆流性食道炎による胸痛は、
狭心症治療薬であるニトログリセリン(ニトロール)により
改善することもあり、
症状のみでは狭心症との鑑別は困難です。
逆流性食道炎を起こしやすいのは以下に挙げる人です
(1) 脂肪の多い食事を好む人
脂肪の摂取により胃酸の分泌が活発になるためです。
(2) 高齢者
下部食道括約筋と食道裂孔がゆるみ、
胃酸を中和する唾液の分泌が少なくなるためです。
(3) 肥満者、妊婦、および背中の曲がっている人
おなかの圧力が高まり、
胃液が逆流しやすくなるためです。
(4) ヘリコバクターピロリ菌の除菌療法を受けた人
ヘリコバクターピロリに感染すると、
胃酸分泌が少なくなります。
除菌により、本来の胃酸分泌能力が回復すると、
逆流性食道炎が起こりやすくなります。
逆流性食道炎の検査
内視鏡検査(胃カメラ)が検査の中心です。
食道の発赤やびらん等の炎症所見が
逆流性食道炎の診断の決め手になります。
しかしながら、食道炎にまで至っていなくても、
胸やけなどの症状がでることがしばしばみられ、
胃食道逆流症(GERD)と呼ばれています。
また、逆流性食道炎の三大症状の一つである「つかえ感」は
食道がんによっても起こります。
このため、
内視鏡検査は欠かすことのできない検査です。
当院では吐き気等の苦痛の少ない
鼻から行う胃カメラ(経鼻内視鏡)も施行しています。
ご希望の方は申し付けて下さい。
また、検査前は胃の中を空にしておく必要があります。
検査前日の午後9時以降には食事をせずに、
検査当日は飲食せずに来院して下さい。
逆流性食道炎の治療
薬物療法が治療の中心となり、以下の薬が使われます。
(1) 胃酸分泌抑制薬
直接の原因である胃酸の分泌を抑え、
食道への逆流を少なくします。
プロトンポンプ阻害薬とH2ブロッカーの2種類があり、
効果が強く、最も使われている薬です。
特にプロトンポンプ阻害薬は
強力に胃酸分泌を抑制します。
(2) 粘膜保護薬
食道の傷口に付着し、
胃酸から食道粘膜を守ります。
(3) 制酸薬
胃酸を中和する薬です。
即効性はありますが、
胃酸は次々に分泌されるため、持続性はありません。
(5) 消化管運動機能改善薬
食道や胃のぜん動運動を改善する薬です。
逆流してきた胃液を胃へと押し戻す機能を高めます。
薬を飲むと逆流性食道炎の症状は改善しますが、
逆流を起こしやすい状態を
薬で完全に治せる訳ではありません。
服薬を中止すると症状が再発することが多いため、
根気よく薬を服用し続けることが大切です。
逆流性食道炎と食事
胃酸の分泌を盛んにしたり、
下部食道括約筋を緩めたりする食品は
避けるようにしましょう。
具体的には、脂肪の多いもの、酢やかんきつ類、
香辛料、コーヒー、炭酸飲料、チョコレート等です。
また、早食いも多量の胃液の分泌を促します。
よく噛んで、ゆっくり食べる習慣をつけましょう。
胃液は食後に多量に分泌されるため、
食後に横になると逆流を引き起こしやすくなります。
ほとんどの場合、
胃液の逆流は食後2-3時間以内に集中しますので、
食後すぐに横にならないようにしましょう。
逆流性食道炎と運動
重い負荷をかける筋力トレーニングをすると、
急激に腹圧が上昇し
胃液の逆流が悪化することがあります。
背中を丸めてまえかがみで行う運動も
同様に注意が必要です。
一般の有酸素運動であれば、
特に心配する必要はありません。
ストレスを解消すると、
胃液の過剰分泌が正常化することも期待できるため、
定期的な運動習慣は効果があります。
逆流性食道炎とたばこ
たばこの煙が、
直接的に胃酸の逆流を増やすことは証明されていませんが、
喫煙者ほど逆流性食道炎が重症化する傾向があります。
一説には、煙を吸い込む動作が胸腔内圧を高め、
胃液逆流を促すのではと考えられています。
また、たばこを吸うと
胃酸を中和する働きのある唾液の分泌が低下し、
より強い酸が食道粘膜に作用するようになるので、
炎症が起こりやすくなります。
胃酸の分泌過剰が原因で逆流性食道炎が起こっている人が、
たばこを吸うと
胃および十二指腸の粘膜防御能が低下するため、
胃潰瘍および十二指腸潰瘍を併発する危険性も高まります。
逆流性食道炎の予防・治療には禁煙が必要です。
当院では禁煙外来を開設しています。
健康保険で禁煙補助薬(内服薬または貼付薬)が処方可能です。
たばこを吸う人は、ぜひ受診してください。
逆流性食道炎とアルコール
お酒を飲むと、
胃の食道との接続部である噴門が緩まり、
胃の働きが弱くなるので
胃液逆流が起こりやすくなります。
中でも、炭酸を含むビール、チュウハイ、シャンパンは
胃の中で炭酸ガスが発生して胃の内圧が高まり、
さらに逆流が起こりやすくなります。
飲酒後は特に、すぐに横にならないように注意して下さい。
◆◇ 逆流性食道炎のまとめ ◇◆
以前は高齢者の病気と考えられていた逆流性食道炎ですが、
最近では食事の欧米化とストレス過多により
若年者にもよく見受けられるようになってきました。
最近の治療薬の発達により、
症状は劇的に改善する方が多くみられます。
また、頑固な咳、胸痛の原因が、
逆流性食道炎であることもよくみられます。
治療とともに嘘のように改善することもよくあります。
気になる方には、一度検査を受けることをお勧めします。
日ごろの生活習慣を正すことが重要です。
